募集要項

受賞者

第2回授賞式集合写真

第2回受賞者

竹本 直道

プロフィール

竹本 直道Naomichi Takemoto

2012年3月 長崎総合科学大学大学院工学研究科博士課程単位取得満期退学
2012年12月 学位取得 (長崎総合科学大学、博士(工学))
2013年4月 株式会社東ソー分析センター 解析グループ(~2015年3月)
2015年9月 国立大学法人九州大学大学院農学研究院 森林圏環境資源科学研究室(~2022年5月)
2022年6月 公立大学法人熊本県立大学環境共生学部環境資源学科 資源循環化学研究室

研究テーマ

好熱可溶化菌を利用した食品廃棄物に含まれる血圧降下成分の単離・同定

概要

食料のロスは、世界の最貧諸国における飢餓との闘い、所得の向上および食料安全保障の改善において極めて重要な問題である(国際連合食糧農業機関、2011年)。食料システム全体の効率性を改善し、食料栄養安全保障と持続可能な開発目標に貢献する上で、食品ロスと廃棄食品の削減は重要である。提案者が所属する熊本県立大学環境共生学部資源循環化学研究室では、好熱可溶化菌を利用した食品廃棄物の可溶化技術を有している。そこで、本研究では好熱可溶化菌が有するプロテアーゼに着目し、食品廃棄物からアミノ酸やペプチド類を生成させ、単離された成分を用いた機能性評価を行う。仮に有効成分が見出されることで、食品廃棄物を再利用することが見込まれ、廃棄物処理費の低減が可能となり、資源循環と低炭素化にも寄与することが見込めるため、地球環境保全に貢献できると考えられる。

前田 英仁

プロフィール

前田 英仁Ayato Maeda

2022年3月 熊本大学 医学部 医学科 卒業
2022年4月 熊本大学 大学院 医学教育部 入学
現在 熊本大学大学院生命科学研究部 総合医薬科学部門 代謝・循環医学分野 分子薬理学講座 大学院博士課程1年次学生

研究テーマ

鉄は人体に数グラム含まれ、酸素運搬や様々な酵素の補因子として働く、生命活動に必須の微量金属である

概要

微量金属としてその絶対量こそ多くはないものの、鉄代謝の異常は、アルツハイマー型認知症や肝臓癌といった健康長寿を脅かす様々な疾患に関与することが知られている。しかし、生体内の鉄動態を可視化する手法がないために、鉄代謝異常と疾患の病態生理を直接結びつけることは困難であった。そこで本研究では、生体内の鉄動態を細胞レベルで可視化する鉄レポーターシステムを開発する。このレポーターを用い、腫瘍微小環境における鉄動態と病態の関連解析を試みる。生体における鉄動態と腫瘍病態の関連解析を進めることにより、将来的には、腫瘍発生初期の「未病」の状態を鉄動態の変化から捉え、早期診断法開発へと繋がることを期待している。

吉田 祐樹

プロフィール

吉田 祐樹Yuki Yoshida

2004年3月 京都大学理学部 卒業
2006年3月 京都大学生態学研究センター 修士課程修了
2009年3月 京都大学大学院理学研究科 博士課程修了
2009年4月 米国Michigan State University 博士研究員
2013年11月 東京大学大学院理学系研究科 博士研究員
現在 熊本大学大学院先端科学研究部 特任助教

研究テーマ

植物が毛細胞の密度を最適化するメカニズム

概要

植物の葉の表面は平たい表皮細胞で覆われているが、その一部は巨大化して突出した毛細胞となる。植物の毛細胞は害虫に対する物理的な障壁であり、植物が食害を受けると、それ以後に毛細胞がより多い葉を再生する「誘導防衛」現象が知られている。これは、表皮細胞のどれくらいの割合が毛細胞への分化運命を獲得するかというパターン形成の柔軟性と捉えられ、発生生物学的に興味深い反応である。私は分子生物学に適したシロイヌナズナを用いて、傷害後に毛細胞の増加が起こらなくなったurm15突然変異体を単離した。これまでに遺伝学的な連鎖解析を行いurm15突然変異体で欠損している遺伝子を特定したので、助成研究ではその分子機構を解明する。urm15原因遺伝子がコードするタンパク質はエピジェネティックな転写制御に関わると予想されることから、urm15突然変異体で発現量が変化している遺伝子群の中に、毛細胞の密度調節の鍵が存在すると期待される。

※受賞者の掲載順は五十音順となります。

代表理事挨拶 要旨

井出 博之 氏
ウェルシーズ一般財団法人
代表理事 井出 博之

皆様、本日はお忙しい中、ご列席を頂きましてありがとうございました。
私がかつて仕事でロンドンに滞在していた頃、ロンドンの中心部にある「サヴィル・ロウ」という街には、テーラーメイド(オーダーメイド)の高級紳士服店が軒を連ねていました。
その時代は、テーラーメイドといえば、ファッションでしたが、現代では一人ひとりの遺伝子解析や腸内細菌の分析が可能となり、「テーラーメイド医療」や「テーラーメイド栄養学」の時代となり、間もなく誰もが最適な医療や栄養学により、年をとっても健康な人生を送れる時代がくるのではないかと思います。
今回受賞された皆様は、非常にレベルの高い基礎研究をされていらっしゃると思います。お三方がさらに今後、もっとのびのびと大きな研究ができるように祈っております。本日はおめでとうございました。

来賓祝辞 要旨

清水 聖幸 氏
熊本大学 副学長
清水 聖幸

受賞者の皆様、この度は本当におめでとうございます。現在、科研費そのものが基礎研究よりも、応用研究・発展も含めて議論・採択する傾向になってきており、今回受賞された先生方のような基礎的な研究への投資が難しくなっているという現状があります。しかし、皆様の研究は、サイエンスの分野からは、非常に重要な研究であり、基礎研究への投資を理解してくださる方をどうやって増やせばいいのか、大学としては常に悩んでいるところでございます。
そうした環境の中、基礎研究や大学院生を支援している財団は本当に少なく、私自身、ウェルシーズ様の取り組みに関しては強く支持しており、御礼を申し上げます。
ウェルシーズ財団の皆様には、ぜひ今回の研究奨励金において採択された研究者との関係を維持しながら、今後とも素晴らしい活動を行っていただきたいと思います。

来賓祝辞 要旨

井出 剛 氏
DAIZ株式会社
代表取締役 井出 剛

父は今年91歳になりますが、1985年に熊本県宇土市に日本最大の規模の医薬品・農薬・化学品の安全性研究所を、父の技術をベースとし、様々な方の支援をいただいて立ち上げました。
そして後の内閣総理大臣細川護熙氏が、熊本県知事を努められていた頃、「水俣病があった熊本では、薬や化学品をどんどん創り出すための研究もありがたいが、そこから発生する弊害から守ってくれる、そういうサイエンティストを集めたい」と仰られたことを機に、200名以上のディフェンス型研究者たちが集結し、パナファーム・ラボラトリーズ(現在の三菱化学メディエンス)を設立され、私自身もそこで仕事をさせていただいておりました。
さらに父は当時、「基礎研究者こそが熊本を変える。そのために基礎研究者が研究費にこだわらず、自由でのびのびと研究できる環境を実現したい」という信念のもと、生物応用技術研究所を設立するべく私財を投じましたが、残念ながら実現には至りませんでした。ただそうした動きの中で、熊本がバイオサイエンスで大きく変わるのではないか、産学官連携がなされ生命科学の拠点になるのではないかと、そう感じられた時代がありました。
父が一番嫌いなことは、サイエンスに期限を設けることです。「サイエンスには期限がない、やればやるほど隘路に入っていき、やればやるほど次のテーマに入っていく。だから期限があるわけがない。」と、父はいつも申しております。真剣に研究をしていただいて、「サイエンスって楽しいな」と思っていただけるだけで、父の夢が叶うのではないかと思います。皆様にはその夢をぜひ叶えていただきたく存じます。本日はおめでとうございました。

一般財団法人「ウェルシーズ」について

当財団は熊本県内の大学、若き基礎研究者への研究奨励金の寄附を行うことを目的として設立いたしました。

目的
若き基礎研究者への研究奨励金の寄附
代表理事
井出博之(創設者)
住所
熊本市中央区南熊本5-1-1 テルウェル熊本ビル 4F DAIZ内
拠出金
1,000万円
設立日
2021年4月1日